65歳問題って何?
障害者を子に持つ親御さんは「65歳問題」をご存知でしょうか?
65歳問題とは、64歳まで障害福祉サービスを利用できていた方が65歳になると、介護保険の要介護認定を受けることにより、介護保険サービスの利用が優先されてしまうことです。
つまり65歳になると介護保険サービスに現在利用している障害福祉サービスと同様のサービスがある場合は介護保険サービスに移行されるということです。
生活介護・自立訓練→通所介護(デイサービス)
居宅介護・重度訪問介護→訪問介護(ホームヘルプ)
介護保険サービスが優先されることで起こりうる問題
介護保険が優先されるとどんな問題が起こるのか?
疑問をお持ちの方が多いのではないかと思います。
介護保険が優先される問題として、以下の4つが挙げられます。
利用料金の問題
支援計画の作成者の変更の問題
事業所の変更の問題
支給調整の問題
利用料金の問題
介護保険サービスの利用料金は1割負担が原則です。
知らない方も多いのではないかと思いますが、実は障害福祉サービスの利用料金も本来は1割負担となっています。
障害者総合支援法の前身である障害者自立支援法時代に問題になったのですが、1割負担を原則としてしまうと、サービスの利用が多ければ多いほど負担額が大きくなります。
負担上限月額が設定されたことで利用者負担が改善されました。
ご本人の所得によって自己負担額の支払いが軽減されたのです。
ご本人の所得によって自己負担額の支払いが決まること→応能負担
サービスを利用すればするほど負担額が大きくなること→応益負担
現在は障害福祉サービスを利用する場合、サービスを利用したご本人の所得によって、自己負担額を支払うか支払わないかが決まります。
しかし、介護保険サービスを利用する場合、もともとが障害者に対応したサービスではないため、負担上限月額が介護保険サービス独自の基準となっており、サービスを利用される方が生活保護の場合でない限り、自己負担額を支払う必要があるということです。
下図が介護保険サービスと障害福祉サービスの負担上限月額の比較です。
障害福祉サービスの利用負担→ご本人が市町村民税を支払っているか支払っていないかで決定
介護保険サービスの利用負担→ご本人が生活保護を受給しているか受給していないかで決定
支援計画の作成者の変更の問題
障害福祉サービスと介護保険サービスではプランの作成者が異なります。
障害福祉サービス→相談支援専門員
介護保険サービス→介護支援専門員(ケアマネジャー)
利用者が65歳になり、相談支援専門員からケアマネジャーに変更になることで大きなデメリットが1つ生まれます。
ご本人をよく知る相談支援専門員からケアマネジャーに移行すると、サービスの調整をする人が変わるだけでなく、ご本人と相談支援専門員と築いた関係も白紙に戻ることになります。
ですが、利用するサービスによっては相談支援専門員が継続して担当になるケースもありますが、ケアマネジャーと一緒に担当することが出てきます。
さらに障害福祉について詳しいケアマネジャーでない場合は、介護保険サービスをどんどん取り入れてしまい、ご本人の利用負担が知らず知らずのうちに膨らんでいく恐れがあるということです。
事業所の変更の問題
この問題はなんとなく想像がつきやすいのではないかと思います。
障害福祉サービスの生活介護を利用されている方であれば、65歳になると、介護保険サービスの通所介護の利用が優先される場合、今まで利用していた生活介護事業所で通所介護事業の指定を受けていない場合は、今まで利用していた生活介護事業所から別の通所介護事業所に利用を変更しなければなりません。
2点目の問題である相談支援専門員からケアマネジャーへの変更でもお話ししましたが、今まで慣れ親しんでいた事業所から新しい事業所に行くことはご本人に見えない負担を課すことに繋がる可能性があります。
支給調整の問題
介護保険サービスを利用できるようになると、障害福祉サービスと介護保険サービスを一緒に利用することになることがあります。
支給調整の問題は介護保険サービスと障害福祉サービスを重ねて利用するときに起こり得る問題となります。
つまり、要介護認定で介護度が認定されると、障害支援区分が変わってしまうことがあります。
ある方の例を挙げます。
この方はもともと障害福祉サービスのみを利用されていたのですが、夏場に脳梗塞となってしまい、入院することになった方です。障害支援区分は6の方でした。
脳梗塞は特定疾病の1つである脳血管疾患に当たるため、病院より要介護認定の申請を勧められました。ご本人は要介護2と認定され、利用したいサービスもなく、要介護認定を受けましたが、結局介護保険サービスは利用していません。
しかし、障害支援区分の認定調査で脳梗塞により入院していたこと、要介護認定を受けていたことが原因で障害支援区分が6から5に下がってしまいました。
つまり、要介護2に認定されたことで介護保険サービスの要介護2が受けられる介護保険サービスを利用できると市区町村に決められてしまったために、障害福祉サービスの利用にも制限がかかってしまいました。
このように介護保険サービスと障害福祉サービスを一緒に利用すると、障害支援区分も要介護認定も軽めに認定される可能性があるのが支給調整の問題です。
子どもが若いうちからできる対策
福祉サービスを利用されている以上、65歳になると、介護保険サービスの利用が必要になることは避けられないことだと思います。
その時になって慌てないようにするために、お子様が利用しているサービスが65歳を過ぎても利用継続できるのかどうか、また利用継続できない場合は現在利用している障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険サービスのどのサービスに当たるのか情報収集することが子どもが若いうちからできる対策になるのではないかと思います。