親なき後問題と年金② ~障害年金について~

前回の記事で年金制度の概要をご紹介しました。

今回は「親なき後」問題で最も関わりが深いと思われる、障害年金にスポットをあてて解説をしてゆきます。年金制度の仕組みは大変複雑でなかなか理解するのは難しいかも知れませんが、なるべく簡易な表現を用いて説明したいと思います。

 

<障害年金について>

障害年金も公的年金の1つである為、2階建ての制度となっており、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。

なお、障害の程度によっては年金による定期支給ではなく一時金(障害手当金)が支給される場合もあります。

障害年金の種類は2種類
●障害基礎年金
●障害厚生年金

日本年金機構のHPに記載されている内容をもとに概要を解説してゆきます。

 

障害基礎年金について

支給要件

1.国民年金の加入中に、障害原因となる病気やケガに関する初診日(医師の診療を初め
て受けた日)があること
※日本国内に住んでいれば、20歳前など年金制度に加入していない期間に初診日が
あるときも含みます
2.一定の障害の状態にあること
3.初診日前日時点で下記何れかに該当していること(初診日が20歳前の場合は不問です)
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間の2/3以上について、保険料が納付されている(免除期間も通算可)
(2)初診日が65歳未満の場合は、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料未納がないこと

⇒親なき後を考える場合、1の要件はあまり問題ないと思われます。3についても経済的に
厳しい状況であれば免除申請もできる為、こちらも大きな障壁ではないと思います。

問題となるのは2ですが、どのような障害の状態であれば年金が支給されるかについては次で詳
細を解説いたします。

 

障害の認定

障害の程度を判断するにあたっては、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という基準が示されており、障害の等級については次の通り定められています。(原文のまま記載)

【1級】
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。
【2級】
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。

⇒上記考え方をベースに、診断書やX線フィルムなどの添付資料をもとに判断されます。
なお、部位毎の詳細な症状については下記基準をご参照下さい。

参照:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

 

障害認定日

1.初診日から1年6ヶ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)
2.20歳に達した日(に障害の状態にある場合)
3.65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった日

⇒親なき後問題を考える場合、多くは2が該当すると思われますが、成人した後に障害を発症した場合でも1又は3による日にちの特定は難しくないと思われます。

 

年金額(令和元年現在)

【1級】 年額 780,100円×1.25+子の加算
【2級】 年額 780,100円+子の加算
※子の加算については第1子・第2子は224,500円、第3子以降は74,800円
※子とは次の者に限る
・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
・20歳未満で障害等級1級または2級の障害者

⇒年金支給額は物価変動率などをもとに毎年見直しがありますが、令和元年現在、2級で年額約78万円となっており、月額に換算すると約6万5千円です。

この額で日常生活を送る事ができるのであれば良いのですが、難しい場合には、何らかの資産を遺すなどの施策が必要となってきます。

 

支給停止

障害基礎年金は所定の障害状態にある場合に支給される年金である為、障害の症状が軽快し、1級・2級の障害の状態に該当しなくなった場合には年金支給は停止されます。(ただし、支給停止後に再度症状が悪化し1級・2級の障害の状態に該当するようになった場合には支給停止は解除され年金支給が再開されます)

⇒障害の状態を審査する為に、1~5年毎(症状によって異なります)に「障害状態確認届」というものが送付されてきます。医師に診断書欄を記載してもらい、期限までに提出する事で、年金支給継続の有無が決まります。また、その際に1級⇒2級に変更(「級落ち」と言います)され、支給額が減額となるケースもあり得ます。

 

障害厚生年金について

支給要件

1.厚生年金の加入中に、障害原因となる病気やケガに関する初診日(医師の診療を初め
て受けた日)があること
2.一定の障害の状態にあること
3.初診日前日時点で下記何れかに該当していること
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間の2/3以上について、保険料が納付されている(免除期間も通算可)
(2)初診日が65歳未満の場合は、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料未納がないこと

⇒一見すると、障害基礎年金と同じに見えるかも知れませんが、大きく異なる点があります。それは「厚生年金加入前に障害が発生している場合は支給対象外」という事です。

親なき後の場合、幼少時からの障害発症というケースも多いと思いますが、その方々は支給対象外となります。ここは大きなポイントになりますのでご注意下さい。

 

障害の認定

障害の程度を判断するにあたっては、障害国民年金と同様の基準で判断されます。なお、障害厚生年金は3級、そして障害手当金という一時金の支給もあります。それぞれ次の通り定められています。(原文のまま記載)

【3級】
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。
【障害手当金】
「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。

 

障害認定日

1.初診日から1年6ヶ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)
2.65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった日

⇒こちらも同様に障害こそ年金とは異なり「20歳に達した日に障害の状態にある場合)という考え方はありません。

 

年金額(令和元年現在)

【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※
【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕※
【3級】
(報酬比例の年金額) 最低保障額 585,100円
※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。

⇒厚生年金はご自身の収入に応じて保険料が変動する為、報酬に応じた年金額が支給されます。また、障害基礎年金と異なり、子がいる場合に加算するという概念がありません。
なお、支給停止の考え方は障害基礎年金と同様になります。

 

障害年金の専門家[社会保険労務士]

以上、障害年金の概要について解説させて頂きましたが、年金制度を理解する事が難しい場合には、年金の専門家である社会保険労務士に相談する事が好ましいと思われます。

また、実際に年金請求の手続きをする場合には、社会保険労務士に代理請求を依頼する事が出来ますので、必要に応じてご検討されてみてはいかがでしょうか?

※埼玉親なき後総合サポートセンターでは、年金の専門家である社会保険労務士が参画してサポートを行っておりますので安心してご相談ください。

 

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048-776-9028(窓口:行政書士花村秋洋事務所)

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