親が亡くなった後、子に訪れる種々の問題。「親亡き後問題」と呼ばれていますが、この親亡き後問題にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は「知的障害のある子を持つ親」という家族の例を挙げ、典型的な問題と基本的な対処方法を検討していきたいと思います。
事例
両親ともに75歳。子は45歳だが、重度の知的障害がある。現在は自宅から通所施設サービスを利用している。両親は自分たちが亡くなった後を心配し、ある程度の財産を残している。
もし両親が亡くなってしまったら?
両親が亡くなってしまった場合、残された子にはどのような問題が訪れるでしょうか?順に説明していきます。
住まいの問題
子には重度の知的障害があるため、現在の自宅で一人で生活をするのは難しくなってしまうかもしれません。その場合は、生活を支援してくれるサービスが必要となります。
現在の通所施設を解約し、入所型の施設と契約をしなければならなくなる可能性がありますが、その契約を自分ひとりで行う判断能力が子にはありません。
お金の問題
子は生活に必要な物を購入する能力はありますが、大きな額のお金を管理する能力はありません。
両親は子を心配してある程度の財産を残してはいましたが、子に管理させると自由に使ってしまい、子自身の将来に不安をもたらしてしまうかもしれません。
自分が高齢になり、年金等で足りない部分を補うための額がなくなってしまうと生活が厳しくなってしまうことでしょう。
亡くなった親の手続きは?
親が亡くなった後はもちろん葬儀や家の片付けを行わなければなりません。死亡届は人が亡くなったことを知った日から7日以内に提出しなければなりませんね。
親が亡くなった後の手続き等を「死後事務」とも言いますが、これを残された子が行うことができないため、親族がいれば急遽親族に依頼したり、親族がいなかった場合は施設の職員等が市町村へ通報し、サポートを受けることになるでしょう。
子が安心して生活するためにはどうすればいいの?
さきほど挙げた問題について、一般的な対処法を挙げていきます。
成年後見制度の利用
成年後見制度とは、子に後見人を設定し、その後見人が今後の子の法律行為を行っていくという制度です。成年後見人は子の法律行為のみを行うため、子は入所施設等で生活の支援を受け、成年後見人がその施設と契約を行う形となります。
成年後見人は子の財産を管理することができるため、生活支援は施設から、財産管理や契約行為は成年後見人から支援を受けて安心して生活を送ることができます。
家族信託の利用
現在、従来あった信託銀行等への信託方法に加え、指定した人へ信託を行う「民事信託」という方法をとることもできます。この民事信託を「家族信託」や「福祉信託」と呼ぶこともあります。
信託とはどのようなものか。今回の例では簡単に言うと、「誰かにお金等を預けて子のために管理してもらう」ことです。
信託された財産は定められた内容に従ってでしか使用することはできません。そのため、子が勝手に預金を引き出し、散財してしまうリスクを無くすことができます。
民事信託は成年後見制度と併用して利用されることもありますが、軽度の知的障害者のような場合ですと単体でも利用することができます。散財を防止し、子が安心して生活を送れるようなプランを設定できるのです。
死後事務委任契約を結ぶ
両親が亡くなった後や、子が亡くなった後の手続きや葬儀等は「死後事務委任契約」を結ぶことで解決できる可能性が高くなります。
死後事務委任契約とは、誰かが亡くなった後の事務手続きを特定の人に委任する契約です。生前にあらかじめ死後事務にかかる費用+死後事務報酬を託しておき、託された人間は委任者が死亡した後は契約の内容どおりの死後事務を執行します。こういったことで自分が亡くなった後の手続きを心配する必要がなくなります。
遺言を作成しておく
遺言を残しておけば、自分の死後の財産を希望通りに使うことができます。
もし知的障害を持つ子の他にも子がいる場合などは、知的障害を持つ子に渡る財産割合を増やすことができます。
また、子が相続手続きを行うことができない場合は、遺言執行者を指定し、遺言内容に沿った手続きを行ってもらうことも可能です。
その他の方法
エンディングノートの活用
自分の財産がどの程度あるのか、自分の死後はどのような問題が起こるのかは身の回りの整理をしてみないとわからないこともあります。
まずはエンディングノートと言われるものを使用して、自分の身の回りのことを確認してみることも有効でしょう。
※行政書士が作成したエンディングノート「フラワーノート」が下記から無料ダウンロードできます。ご活用ください。
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ライフプランニング
自分の財産を確認したら、この財産でどのように生活を送ることができるのか、また子にどの程度財産を残すことができるのかを計画する必要があります。
生活費、住居費、社会保険料、税金等を割り出し、想定される寿命を基に計算をします。ライフプランニングを行って算定された残額を家族信託に回すようにすれば、計画的な財産利用ができることとなります。
それぞれの家庭の問題と対処法を割り出そう
以上、親亡き後問題の典型的な例と一般的な対処法を挙げましたが、親亡き後問題はそれぞれの家庭によって内容や程度が大きく違うため、それぞれの家庭での問題点の割り出しと対処法の検討が必要となります。
埼玉親なき後総合サポートセンターでは、行政書士、家族信託専門士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、ケアマネジャー(介護支援専門員)、社会福祉士、介護福祉士等の資格を持ったメンバーを擁しております。皆様のご相談に的確に対応していきたいと思いますのでぜひご活用ください。